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税務調査で否認されるとどうなる?事例や対応方法について解説

2023.11.22

税務調査で否認されると、納税者側の申告内容が認められず、追加で不足分の税金を課せられることになります。否認とは文字通り、認められないことを指します。 税務調査では、どのような場合に否認されることが多く、否認された場合はどのような対応が必要になるのでしょうか。 今回は、税務調査で否認されることが多い事例や否認された場合の対応方法についてご説明します。



税務調査の否認事例

税務調査では申告内容が否認された事例としては次のようなケースがあります。
・一部の従業員のみの会食に充てた費用をいつも福利厚生費として経費に計上していた
・取引先との打ち合わせ後に飲食した費用を会議費として経費に計上していた
・社長のプライベートな旅行の費用を旅費交通費として経費に計上していた
・家族に購入した土産品を交際費として経費に計上していた
・社用車としている車をプライベートで使用し、税金やガソリン代などを経費に計上していた
経費は、事業活動をするうえで必要になった支出ですが、上にご紹介した例はいずれも、事業上必要であったとは言い難い支出であると言えるでしょう。このような支出は税務調査で否認されるケースが多くなります。

経費の否認とは

税務調査で、実際に否認されることが多いのは経費についてです。売上を多めに計上すれば、それだけ所得額が増え、納税すべき額が増えてしまうため、売上を多く計上する人はいません。しかし、経費は多く計上すればするほど所得額を少なく見せることができるため、納税額を抑えるために経費として認められない支出まで、経費としてしまうケースがあるのです。
本来は、経費としては計上できない支出まで経費として計上されていれば、税務調査でそのことを指摘され、経費として認めてもらえません。これが、経費の否認です。

経費が否認をされたらどうする

税務調査で経費が否認されると、売上から差し引ける経費の額が減るため、所得額が大きくなり、新たな税負担が生じます。つまり、追徴課税がなされるのです。 経費が否認されると、本来納めるべき税額との差分、差分の10%にあたる過少申告加算税、納税が遅くなった利息としての意味合いを持つ延滞税の支払いが必要になります。税負担が大きくなれば、それだけ手元に残るお金は少なくなってしまうため、できるだけ追徴課税は避けたいというのが納税者の本音でしょう。
しかし、税務調査で経費の否認をされたら、調査官の指摘を受け入れて納税するしかないのでしょうか。

経費が否認されたときの対応方法

税務調査で経費が否認された場合には、指摘を受け入れて修正申告をする方法と経費の正当性を主張し、経費の容認を求める方法の2つがあります。それぞれの対応方法についてご説明します。

経費の修正申告の方法

税務調査で経費が否認され、否認された内容に納得し、指摘を受け入れる場合には修正申告を行います。修正申告とは、納税額が少なかった場合に申告期限後に納税者自らが行う手続きです。 修正申告は、申告書を正しい内容で作り直し、再度税務署に提出するものです。個人の場合は、修正申告書を提出すれば、所得税だけでなく住民税も修正されることになります。法人の場合は、税務署に修正申告書を提出しても、税務署で修正できるのは国税のみです。そのため、自治体にも修正申告書を提出法人道府県民税・法人事業税・法人市町村民税の修正を行う必要があります。
また、不足していた本税、過少申告加算税、延滞税も支払わなければなりません。

経費の容認を求める方法

実は、経費にはどこまでを経費として認めるかという明確な基準があるわけではありません。そのため、調査官には経費ではないと否認されたものについても、納税者側からすれば事業に関わる支出であり、否認されることに納得がいかないというケースも生じます。 経費を否認されたからと言って、必ずすぐに否認を受け入れ、修正申告をする必要はありません。納得がいかない場合には、経費であることを証明するための交渉を行えばよいのです。調査官が納税者側の主張に納得すれば、一度否認した経費であっても、再度経費として容認される可能性があります。 修正申告を受け入れれば、納税額が上がるため、支出が増え、事業にも影響が生じるでしょう。経費の否認に納得できないようであれば、すぐに修正申告をするのではなく、経費の正当性について主張し、調査官と交渉を行うことが大切です。

税務調査の対応

税務調査時に経費を否認された場合、調査官も根拠なく、経費を否認するわけではありません。経費と認めないと判断したからには、その理由となる根拠があるはずであり、税務調査時に調査官の主張に反論することは、決して簡単ではないのです。

税務調査官との対応方法

まず、税務調査官は税務調査のプロであり、あらゆる可能性を考えたうえで調査を行います。そのため、調査官と同等レベルの税の知識と税務調査のノウハウがなければ、税務調査官が納得できるだけの反論をするのは難しいのが現実です。
税務調査で調査官の主張をそのまま受け入れるのではなく、納税者側の意見も主張し、納得できない追徴課税を防ぐためには、税理士に対応を依頼することをおすすめします。ただし、税理士と一口に言っても、全ての税理士が税務調査に詳しいわけではありません。税理士にも得意分野があり、税理士だからと言って全員が税務調査のノウハウを持っているわけではないのです。税務調査の際に、適切に意見を主張するためには税務調査の豊富な経験を持つ税理士に対応を依頼するとよいでしょう。



税務調査での反論の仕方

税務調査の経験がなければ、調査官の主張に対し、全て真っ向から反論した方がよいと考えるかもしれません。しかし、調査官も根拠を持って否認をしていることから、納税者の主張が100%通るとは限りません。そこで重要なのが、交渉の落としどころをどこにするかということなのです。主張をぶつけ合い、税務調査を長引かせても、お互いにとってメリットはありません。調査官も、複数の税務調査を担当することから、できるだけ調査を長引かせずに終わらせたいという希望を持っています。そのため、一定箇所については税務調査官の主張を認めるものの、ほかの箇所については納税者の主張を認めてもらうなど、税務調査では調査官との駆け引きが大切になるわけです。
しかしながら、どのあたりを交渉の着地点とすればよいのかの見極めは簡単ではありません。納税者側の主張に重きを置きすぎると交渉が長引いてしまい、調査官の主張を受け入れすぎると追徴課税額が大きくなってしまいます。どのあたりであれば税務調査官も納得しやすく、追徴課税を最小限に抑えられるのかを早いタイミングで見極めることができるのは、税務調査の経験を豊富に持つ税理士だからこそできることであると言えるでしょう。

まとめ

税務調査で経費を否認されてしまった場合、調査官の主張を受け入れて修正申告を行うか、納税者側の主張を伝えて経費の再容認を求めるかの2つの対処法があります。明らかに経費として計上できない支出であった場合や金額のミスなどがあった場合には、指摘を受け入れて修正申告を行い、追徴課税に従うようにしましょう。しかしながら、事業上必要であった支出であれば、解釈の違いによって否認されているケースもあります。経費の否認に納得できない場合は税理士に相談し、納税者としての意見を主張することをおすすめします。
税理士法人松本は、税務調査の豊富な対応経験があります。経費の否認についても、納税者の考えをしっかりお伺いしたうえで調査官と交渉を行い、納税者の方にもご満足いただける結果を導いてきた実績がございます。税務調査で経費を否認され、対応にお困りの場合にはぜひお気軽に税理士法人松本までご相談ください。



税務調査で経費が認められなかったらどうなるの?

2023.11.15

税務調査は、法人ばかりを対象に行われるものではありません。納税者であれば、法人であっても個人であっても税務調査の対象となり得るのです。個人事業主を対象とした税務調査では「経費」をチェックされるケースが多くなります。もし、税務調査で計上した経費が経費として認められなかった場合、納税者にはどのようなリスクが生じるのでしょうか。 今回は、税務調査で経費を認められない場合のリスクと対処法についてご説明します。



税務調査で経費として認められるものと認められないもの

経費とは、事業活動を行う上で必要となった費用のことです。個人事業主の場合、所得税額は売上額から経費を差し引くと算出できます。事業で必要になった支出をしっかりと経費に計上すれば、それだけ所得を圧縮できるため、節税には効果的です。しかしながら、個人事業主の中には、所得を低く見せかけるために経費を水増しして計上する例も少なくありません。そのため、税務調査では経費の内容を詳しくチェックされることが多いのです。
税務調査において経費として認められる支出と否認されることの多い支出についてご紹介します。

経費として認められるもの

税務調査で経費として認められる勘定科目は次のようなものです。

・人件費
従業員に支払う給与は人件費となります。

・消耗品費
コピー用紙や文房具など、10万円未満の事務用品などは消耗品費として計上可能です。また、キャビネットやデスクなども10万円未満であれば消耗品費として扱えます。

・接待交際費
事業に関係する交際に伴う飲食代、取引先の冠婚葬祭の際などに渡す祝い金や香典などは、接待交際費として計上可能です。

・旅費交通費
営業活動や出張にかかった飛行機代や電車代などは、旅費交通費となります。

・研究開発費
新サービスや新商品開発のために参加したセミナー受講費などは、研究開発費として計上可能です。

・広告宣伝費
商品やサービスを宣伝するためにかかった費用は、広告宣伝費となります。パンフレットの作成なども広告宣伝費に該当します。

・図書教育費
事業に必要な知識を学ぶために必要となった書籍や新聞などの購入費用は、図書教育費として計上可能です。

・通信費
事業のために使用した電話代やインターネット通信料などは、通信費となります。切手やはがきなども通信費に含まれます。

・地代家賃
オフィスの家賃、駐車場代などは、地代家賃として経費に計上可能です。

・減価償却費
不動産や車、パソコンなど、事業のために購入した資産は、法律で定められた法定耐用年数に応じて分割し、減価償却費として計上します。

・福利厚生費
社員旅行や忘年会等、従業員の福利厚生に使用した費用は福利厚生費として計上可能です。

・支払手数料
事業上必要になった金融機関の振込手数料や税理士・弁護士などへの報酬などは、支払手数料として計上します。

・租税公課
印紙税や登録免許税、固定資産税、事業税などは租税公課として経費計上が可能です。

税務調査で経費として認められない支出

次のような支出は、経費としては認められません。

プライベートの支出
・家族との旅行代
・友人との飲食代
・個人的に参加したゴルフコンペの参加費
・事業に関連性のない雑誌の購入代
・プライベートで使用している携帯電話の料金
など、事業には関連性がなく、プライベートで必要となった支出は経費にはなりません。

経費計上できない税金
・所得税、住民税、相続税、贈与税
など、税金でも経費に計上できないものがあります。

税務調査でチェックされやすい経費とは

税務調査で経費として認められる支出とは、事業のために必要となった支出です。しかしながら、経費にはグレーゾーンと呼ばれる部分があります。税務調査では、税務上の解釈によって経費として認められるケースと経費として認められないケースがあるのです。 税務調査で指摘を受けやすい経費の具体例をご紹介しましょう。

事業用の車の購入費や維持費、ガソリン代などの経費

プライベートで使用している車とは分け、事業用に使う車として利用記録が残されていれば経費として計上が可能です。しかし、事業用車両としての利用実態が証明できなければ、購入費用はもちろん、維持費なども経費として計上することはできません。

取引先との個人的な会食

新規取引先を招待して開いた会食などの費用は経費として計上可能です。しかしながら、取引先の相手であっても、個人的な付き合いで食事をした場合などの費用は、経費としては認められません。

事業の出張と兼ねて観光もした場合

事業の出張と兼ねて、プライベートで観光もした場合は、事業に直接かかわっていた費用に関しては経費として計上できますが、全額を経費として計上することはできません。また、家族に購入したお土産代なども経費として扱うことは認められませんが、従業員のために購入した場合は福利厚生費として計上が可能です。

プライベートでも使用できる消耗品

事業で使用すると言っても、スーツはプライベートでも使用が可能です。そのため、スーツ代は経費としては認められません。同様に、仕事で使用するバッグ、仕事で使用する腕時計、仕事で使用する革靴なども、プライベートでも使用ができるため、費用として計上することは難しい可能性が高くなります。

税務調査で経費が否認されたときはどうなる?

税務調査では、帳簿や書類などを細かくチェックされます。もし、税務調査で経費として計上していた費用を否認された場合は、否認された分の税金と確定申告の額が小さかったことに対するペナルティである過少申告加算税、納付が遅れたことの延滞税などが課税されます。

過少申告加算税とは

過少申告加算税は、確定申告をする際に正しい納税額よりも少なく申告したことに対して課せられる税金です。過少申告加算税の額は、本来納付すべき税額との差分の10%にあたる額となります。ただし、税額の差分が50万円以上になる場合は、50万円を超える部分については15%の割合で課税されます。

延滞税とは

納付が遅れたことに対して科せられるペナルティが延滞税です。税務調査の指摘により、追徴課税が行われた場合は、延滞税も納めなければなりません。
令和3年1月1日以後の割合は、納付期限の翌月から2か月までの期間は2.4%、納付期限の翌日から2か月を経過する日の翌日以降からは8.7%となっています。

悪質な場合は重加算税が課される

税務調査時にプライベートの支出を経費として計上していただけでなく、不都合な書類を隠蔽するなど、悪質性が高く、脱税と判断されるような行為を行った場合は、過少申告加算税に代えて重加算税が加算されます。重加算税の税率は、最も重い35%です。

税務調査で経費が認められるか不安な場合には税理士にご相談を

税務調査は、ほとんどの場合、税務署から事前通知が行われます。そのため、現金商売等をしているケースを除き、急に税務調査が開始されるケースはほとんどありません。事前通知にて指定された日時に税務調査官が現場を訪れ、調査が行われることとなります。
もし、税務調査の通知を受けたけれど、グレーゾーンの経費があり、認められるかどうか不安があるという場合は、税理士に相談してみることをおすすめします。グレーゾーンの経費とは、解釈の違いによって、経費として認められるケースもあれば、認められないケースもあるということです。前述のように、経費として認められなければ追徴課税が行われ、納税負担が増えてしまいます。しかし、税の専門家である税理士であれば、税務調査時に納税者側の主張を調査官に伝えることができ、グレーゾーンの支出であっても経費であることを的確に主張することができる場合もあります。
税務調査の連絡を受け、経費に不安を感じているようであれば、ぜひ早めに税理士に相談し、税務調査の立ち会いを依頼するとよいでしょう。現場に税理士が立ち会うだけで精神的な負担も緩和されるはずです。

まとめ

個人事業主の場合、法人と違って、事業のお金と家事のお金が明確に分けられていないことが少なくありません。そのため個人事業主を対象とした税務調査では、経費をチェックされるケースが多くなっています。 経費には明確に経費として認められるもの、認められないもの以外に、解釈の仕方によって判断が変わるグレーゾーンの経費があります。税についての詳しい知識をお持ちでない場合は、ご自身で経費の正当性について理論的にご説明するのは難しいかもしれません。そのような場合は、ぜひ税理士にご相談ください。
税理士法人松本は、税務調査の豊富な経験を持つ税理士事務所です。納税者の立場に立ち、追徴課税を極力避けるための交渉を行ってまいります。税務調査の通知を受けてご不安を感じている場合には、ぜひLINEまたはお電話にてお気軽にご相談ください。



税務調査の調査官とは?調査を長引かせないために知っておきたいこと

2023.11.08

税務調査では、調査官が納税者のもとを訪れ、さまざまな帳簿の提出を求めたり、内容の確認をしたりしながら申告内容に間違いがないか、細かく調査をします。納税者の中には、調査官と耳にするだけで不安を感じたり、緊張してしまったりという人もいるのではないでしょうか。では、税務調査官とはどのような人物で、どのような目的で税務調査を行うのでしょうか。
今回は、税務調査にあたる調査官の肩書き、調査官が税務調査時に考えていることなど、税務調査をスムーズに進めるために知っておきたい知識をご紹介します。



税務調査の調査官とは

税務調査とは、納税義務のある人が正しく確定申告を行い、正しく納税をしているのかを調べる調査です。このとき、実際に調査を行う人が調査官です。 実は、調査官と一言でいっても、調査官の肩書きはさまざまであり、税務調査の経験値も異なります。

調査官には税務調査を行う権限がある

税務調査の調査官には、納税者に対して税金に対する質問を行う質問検査権が与えられています。調査官に納税に関する質問をされた場合、納税者には黙秘権は認められておらず、正しく回答しなければなりません。 したがって、調査官の肩書きを知ることで調査の特徴を知ることはできても、税務調査では調査官の質問などには誠実に対応しなければならないことは忘れないようにしましょう。

税務調査の調査官の肩書きと調査の特徴

税務調査には、強制調査と任意調査があります。強制調査とは脱税が疑われる納税者に対し、裁判所の令状を得て、強制的に行う調査です。この強制調査は、国税局が担当しますが、一般的に実施されている任意調査は、税務署の税務調査官によって行われます。そのため、ここでは税務署に所属する税務調査官の肩書きを序列が高い方からご紹介します。

・特別国税調査官
税務署が所管する法人・個人の中で、事業規模の大きい法人・個人あるいは大口資産家等を担当する調査官で「特官(とっかん)」と呼ばれる人たちです。 「特官部門」という正式な部門があるわけではありませんが、独自の部門を持ち、そこに所属する特官以外の調査官などは「特官付」と呼ばれ、特官をサポートします。
さらに大きな規模の法人になると、特官の中でも幹部クラスが調査を担当します。これらの特官は職員名簿の上では署長、副署長の次に名を連ね、副署長と同列の立場にあります。 実際に税務調査の現場に向かい実地調査を行ないながら、通常は自らの決裁権で調査をまとめていきます。

・統括国税調査官
特別国税調査官とは異なり、税務調査に登場することはそれほど多くはなく、部内の調査をまとめる立場にあるため、通常は署内で調査を指揮していきます。調査に当たる場合には、部下の模範となる必要があるためなのか、厳格な態度で調査を進めていきます。

・上席国税調査官
国税調査官の上司に当たる「上席」の多くは経験豊かなベテラン調査官で、実地調査における第一線での活躍が期待され、現場の責任者にもなります。
とはいえ、上席以下の調査官には決裁権がなく、上司である統括が決裁する判断材料を揃えるため、実地調査が終了しても問い合わせが続き、調査が長引く場合もあります。

・国税調査官
国税専門官での採用(大卒程度)の場合、「研修→実務(税務署)→研修」を経て約4年で国税調査官に任用されます。20代後半~30代前半まではこのポジションで経験を積み、上席へと昇進していきます。 上席と同様に実地調査が終了した後も問い合わせが多くなりがちですが、その割にはレスポンスが遅く、税務調査が完了するまでに時間がかかることがあります。

・財務事務官
そもそも国税職員になるには、まずは国家公務員の採用試験にパスする必要があります。合格後は税務大学校で研修を受けた後に各管内の税務署に配属され、この期間は「事務官」として調査等に当たります。 国税調査官になるまでには、国税専門官採用者(大卒採用)は約4年、税務職員採用者(高卒採用)は約8年を要します。上席や国税調査官とともに調査に同行することが多いですが、慣れてくるに従って単独で調査臨場するようになります。

税務調査の調査官の本音

上にご紹介したように、担当する税務調査官の肩書きによってある程度、税務署の税務調査に対する調査深度を知ることができます。 税務署ではなく、国税局の税務調査官が担当する場合や特別国税調査官が調査を担当する場合などは、何かしらの疑いをもたれている、または、厳しい税務調査が行われると考えられるでしょう。また、国税調査官による調査の場合は、若い調査官が中心となるため、税務調査を受ける方も安心してしまうケースもあります。
しかし、国税調査官は上席国税調査官への昇進を目指す人たちであり、上司に報告するために、細かな点までくまなく調査をする傾向にあり、調査が長引く可能性があるでしょう。
ただし、調査官も税務調査を長引かせたいと思っているわけではありません。税務調査では、年間の調査件数の目標を立てていることがほとんどです。そのため、調査官一人あたりが担当すべき調査件数も決められています。1件あたりの調査が長引いてしまえば目標に達しない可能性が出てくるため、調査官も税務調査はできるだけ早く終えたいと思っているはずなのです。調査官は、税務調査で成果をあげたいと思う気持ちと目標とする税務調査の件数をこなしたいという気持ちの両方を抱きながら、税務調査に至っているケースがほとんどであると考えられます。 納税者としても税務調査が長引けば、通常業務に支障をきたします。調査官も納税者もできるだけ税務調査を長引かせたくないという思いは同じなのですが、税務調査官の求める成果と納税者の求める結果は相反するものです。そのため、なかなか両者の落としどころを見つけることができず、調査が長引いてしまうケースが出てくるわけです。

税務調査の通知が来たら税理士に相談を

税務調査の通知が来たら、税理士に相談することをおすすめします。税理士であれば、帳簿を見るだけで税務調査の際に指摘されそうな項目が分かります。そのため、税務調査の前に帳簿をチェックし、納税者にどのような対策をしておくべきなのかをアドバイスすることが可能です。
また、税理士は調査を長引かせたくないけれど成果は欲しいという調査官の心理を巧みに利用し、一定の成果を得られつつも納税者の追徴課税を最小限に抑える絶妙な落としどころを早期に見つけることができます。税理士に税務調査の担当を依頼すると、スムーズに税務調査を進められるのはこのためなのです。
しかしながら、税理士にも得意分野があります。税務調査の対応を依頼する際には、税務調査の経験が豊富な税理士を選ぶことを忘れないようにしましょう。

まとめ

任意の税務調査を担当する調査官は、税務署に所属している調査官です。税務署では、税務調査の目標件数を定めていることが多く、調査官も担当する税務調査の目標件数を設定していることが多くなります。
そのため、税務調査の成果は得たいものの、調査自体は長引かせずに終えたいと考える調査官がほとんどです。税務調査の経験が豊富にある税理士であれば、そのような調査官の心理を推察し、納税者の主張はするものの調査官も納得できる調査の落としどころを見出し、スムーズに調査を終えられるような交渉ができます。
税理士法人松本は、税務調査に強い税理士集団です。納税者の立場に立った主張を行い、追徴課税を最小限に抑えつつも、税務調査を長引かせずに終えられるような交渉も可能です。 税務調査の通知を受けた場合には、ぜひ税理士法人松本にご相談ください。初回の電話相談は無料で承っています。



帳簿がないのに税務調査の連絡が入ったらどうする?対処法とは

2023.11.01

税務調査とは、納税者が申告した内容が正しいかどうかをチェックする国税庁が管轄する税務署などの機関による調査です。税務調査では、事業の取引やお金の流れなどを記録した帳簿を確認しながら、申告内容と相違がないか細かな確認を行います。
本来、事業による所得があれば、しっかりと帳簿をつけて、日々の資産状況の変化を記録していかなければなりません。しかし、納税者の中にはそもそも確定申告をしていなかったり、帳簿をしっかりとつけていなかったりしたために、税務調査の連絡を受けても帳簿がないと焦ってしまうケースがあります。もし、帳簿がないにもかかわらず、税務署から税務調査に入る旨の通知を受けた場合にはどのように対処すればよいのでしょうか。
今回は、帳簿がない場合の税務調査時の対応方法についてご説明します。



税務調査で必要な帳簿とは

税務調査では、調査官が事務所や店舗を訪れ、さまざまな帳簿を確認しながら申告内容の確認をしていきます。税務調査で確認されることの多い帳簿や書類は次のようなものです。

・総勘定元帳
・入出金振替伝票
・現金出納帳
・当座預金出納帳
・受取手形記入帳
・支払手形記入帳
・売掛帳
・買掛帳
・棚卸表
・見積書
・注文書
・契約書
・納品書
・請求書
・領収書
・決算書 など

税務調査で帳簿がない場合のリスク

令和4年度税制改正によって、帳簿がない状態や記帳が正しく行われていない状態を防ぐため、過少申告加算税と無申告加算税の加重措置が講じられることとなりました。
つまり、税務調査において必要とされる帳簿がない場合のリスクが大きくなったのです。

無申告加算税と過少申告加算税

令和4年度の税制改正についてご説明する前に、まずは確定申告を正しく行わなかった場合のリスクからご説明しましょう。
確定申告が必要であるにもかかわらず、確定申告をせずに、納税していなかった場合にはペナルティとして「無申告加算税」が課せられます。令和5年分以降に関しては、納付すべき税額に対して50万円以下の部分に関しては15%、50万円超~300万円以下の部分に関しては20%、300万円超の部分に関しては30%(一定の場合は20%)の無申告加算税が加算されます。
また、確定申告はしたものの、申告内容に誤りがあり、実際よりも少ない額を申告した場合には「過少申告加算税」が課せられます。過少申告加算税が課せられると、本来納めるべき税金との差分を納める際に、差額の10%相当額を加えた額を納めなければなりません。また、期限内確定申告額と50万円のいずれか多い金額を超える分に関しては15%の割合で課税されます。

税務調査に必要な帳簿がない場合の加算税

税務調査で必要な申告をしていなかったことが発覚した場合には無申告加算税、正しい税額よりも少ない税額で申告していたことが発覚した場合には過少申告加算税の納付が必要です。これらは、本税(本来納めるべき税金)に加えて納付が必要になる税金であり、正しく申告を行わなければ納税者の負担は大きくなります。
さらに、税務調査が行われた際に必要な帳簿の提出を求められたものの、帳簿がない状態だった場合には、無申告加算税または過少申告加算税に10%を加重することが令和4年度の税制改正で決定しました。この決定により、帳簿がない場合の税負担はさらに重くなるのです。
なお、この措置は令和6年1月1日以降に法定申告期限となる所得税、法人税、消費税について適用されます。

青色申告が取り消しになる可能性も

確定申告はしていたものの、税務調査で帳簿がないことが発覚した場合、青色申告の取り消し処分を受ける可能性があります。青色申告は、正しい会計処理の元で申告・納税をしている場合に赤字を繰り越しできたり、青色申告特別控除を受けられたりといった特典が用意されている申告方法です。国税庁では、次のような場合に青色申告の承認を取り消すとしています。
・税務調査において帳簿書類を提示しない場合
・税務署長の指示に従わずに、帳簿の記録、保存をしていなかった場合
・隠ぺいまたは仮装の場合
帳簿がないという状態は、帳簿の記録、保存をしていなかった状態に該当します。従って、税務調査で帳簿がないことが発覚すれば、青色申告が取り消される可能性がもあります。

推計課税がなされる可能性がある

推計課税とは、青色申告ではなく帳簿などの資料が十分でない場合に、同規模同業者の状況や売上、仕入れの単価などから、収入や経費を推計し、課税する方法です。推計課税がなされれば、売上額が実際の状況よりも高く設定されてしまうことが多く、売上が高くなれば、所得も高くなり、課税される額も高くなってしまいます。
また、推計課税がなされれば消費税の仕入税額控除も受けられなくなる可能性が高くなり、消費税の負担額も大きくなるリスクがあります。

帳簿がないのに税務調査の通知が入ったら

税務調査が入るときには、税務署から事前通知がなされるケースがほとんどです。事前通知では、税務調査に入る日時や調査を行う場所、調査期間などが伝えられます。このとき、調査対象となる帳簿書類についても説明があるはずです。
本来、お金の流れについては帳簿に記載し、必要な期間、帳簿は保管しておかなければなりません。しかし、帳簿がない場合、税務調査時にはどのように対応すればよいのでしょうか。
帳簿がない状況で税務調査の連絡が入った場合に取るべき対応をご紹介します。

今ある書類を元に収益の集計をしておく

帳簿がない場合も、手元にある契約書や請求書、領収書などの書類を準備し、売上や必要経費の集計をしておきましょう。青色申告でもなく、まったく書類がない状況であれば、推計課税がなされる可能性が高くなってしまうため、少しでも税務調査を円滑に進めるために、あるだけの書類を使って、できる範囲で帳簿を作成しておくようにしましょう。

請求書や領収書などの書類を準備しておく

請求書や領収書などは、お金の動きを証明する書類でもあります。少しでも売上や経費の額を証明できる書類を準備しておけば、申告内容の根拠を示すことができます。また、社内資料などでも1件当たりの平均売上額や取引件数などを示す書類があれば、ある程度の年間売上額を算出できる可能性があります。
事業に関する数字を示す書類があれば、税務調査までに準備しておくとよいでしょう。

税務調査に強い税理士に相談をする

税務調査では、調査官が訪れ、必要な帳簿の提出を求めます。帳簿がなければ、帳簿がない旨を伝えなければなりません。少しでも追徴税額を抑えるためには、現状ある資料で用意した帳簿や領収書等の書類を提出した方がよいでしょう。
しかし、正しい帳簿の作成方法が分からなければ、調査官を納得させられるほど精度の高い帳簿は作れない可能性が高くなります。また、税務調査当日は、調査官からさまざまな質問がされますが、会計や税に詳しくない方の場合適切な対応ができないケースも少なくありません。
税務調査の経験が豊富な税理士であれば、帳簿がない場合の税務調査時の対応についても熟知している可能性があります。少しでも追徴税額を抑えるためのアドバイスも受けられるはずです。何より、税務調査当日に税理士に立ち会ってもらえれば、分からない質問がなされた場合にもサポートしてもらえるため、精神的にも心強いでしょう。
帳簿がない状態で税務調査の通知を受けた場合には、まずは税理士に相談してみることをおすすめします。

まとめ

納税の義務のある法人や個人であれば、誰もが税務調査の対象になる可能性があります。そのため、日ごろから帳簿をしっかりとつけておくことが大切です。しかし、税や会計についての正しい知識がないために、必要な帳簿がないまま税務調査を迎えてしまうケースもあるでしょう。
そのような場合は、税務調査の経験豊富な税理士法人松本にお気軽にご相談ください。これまでの豊富な税務調査の対応経験から、帳簿がない場合の対応についてのノウハウも保有しています。初回の電話相談は無料で承っています。土日祝日も対応していますので、税務調査にお悩みでしたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。



税務調査における反面調査とはどんな内容なのか?

2023.10.31

税務調査では、「反面調査」と呼ばれる調査が行われることがあります。反面調査はどのような理由で行われ、また実施された場合にどのようなリスクがあるのでしょうか。
ここでは、税務調査の反面調査の内容やリスク、注意点などについて解説しています。 取引先に税務調査が入り、自分のところにも税務調査がくることになりお困りの方は税理士法人松本までお気軽にご相談ください。



そもそも反面調査とは?

反面調査とは、税務調査の際に実施される調査の一つで、調査対象となった事業者の取引先に対して行われるものです。反面調査では調査対象者ではなく、調査対象者と関係のある取引先などに対して調査が行われます。もちろん、反面調査が行われるときには、調査対象となる納税者に対しても調査は実施されていますが、それだけでは十分な情報を得られない場合に反面調査が行われるのです。

通常の税務調査は自社が対象

通常の税務調査では、調査の対象となるのは自身の会社や事務所です。パソコンや各種書類、帳簿や通帳などから、過去の取引について申告内容と合致しているかを確認されることとなります。 調査対象となっている事業者や会社に残っているデータだけを調べても実態解明が難しい場合や、疑わしい点についてさらに情報が必要と判断された場合に、反面調査が実施されるのです。

反面調査では、得意先や銀行などへ問い合わせが行われる

反面調査では、得意先や金融機関など、調査対象と取引のある企業などに対して行われます。文書や電話で問い合わせをすることもあれば、相手先まで訪問して調査を実施することもあるのです。また、場合によっては自社の従業員や退職した従業員、その家族にまで聞き取りが行われるケースもあります。 反面調査では、得意先や銀行に対して、主に調査対象者との取引について確認や質問が行われます。

反面調査の方法

反面調査の方法は、通常の税務調査と同様です。 口頭で取引についての質問がなされ、帳簿や請求書など、調査対象者との関係性を示す書類の提示が求められます。

すべての税務調査で反面調査が実施されるわけではない

税務調査では、通常反面調査まで行われることはなく、対象となる事業者が保有している書類やデータのみの確認となるのが一般的です。
では、反面調査はどのような場面で実施されるのでしょうか。反面調査が実施されやすいケースについて、次章でさらに詳しく解説していきましょう。

反面調査が行われやすいケースとは?

反面調査が行われるケースとは、調査対象者の事務所や店舗などを対象に行った調査だけでは事業実態の把握が難しいと判断されたケースです。具体的には、税務調査において、以下のような状況となった場合は、関係先に対して反面調査が行われる可能性が高いでしょう。

過去の書類やデータが残っていない

税務調査では、過去3~5期分まで遡って調査や確認が行われます。この期間に起きた取引に関する情報や書類について、紛失や破棄といった理由で確認が困難となった場合、反面調査を実施する可能性が高まるでしょう。
また、過去の書類やデータを保管しているつもりでも、一部紛失していたり、データの削除や記入ミス、計上漏れなどによって事実関係が把握できなかったりする際にも、反面調査の対象となりやすいものです。

税務調査に対して協力的な態度でない

税務調査で求められた書類を提出しない、質問に答えない、威嚇や恫喝など穏やかなやり取りができないなど、調査に対して非協力的な態度を取っている場合も、対象者からは必要な情報が得られないと判断され、反面調査の対象となることがあります。

悪質な所得隠しなどが疑われる場合

提示する書類やデータが揃っており、税務調査で穏やかに対応していたとしても、反面調査の対象となるケースがあります。税務署の方で事前に多額の脱税や所得隠しといった情報を掴んでおり、税務調査でその事実確認ができない場合、取引先に対して反面調査が実施されやすいでしょう。 調査対象となる期間中に無申告期間が含まれる、過去に意図せず脱税が認められる行為が発覚したというケースでも、反面調査の可能性が高まります。
このように、反面調査が行われるケースは限定的であり、通常であれば取引先にまで連絡がいくことはありません。
ただし、税務署の方で反面調査が必要と判断された場合には、たとえ取引先と関係が悪くなる可能性があったとしても連絡されてしまうため注意が必要です。 取引先の税務調査で自分にも税務調査の連絡がきた方は税理士法人松本までいますぐお電話ください。



反面調査を回避するための対処法は?

反面調査が行われると、取引先から虚偽の申告をしているのではと思われ、信用を失ってしまうケースがあります。信用低下により、取引が停止してしまう可能性もあるでしょう。
また、銀行に反面調査が入ったことによって、融資がストップしてしまう恐れもあります。取引や融資に影響が生じれば、事業運営にも大きな影響が生じるでしょう。反面調査が行われると、さまざまなリスクが生じることを忘れてはいけません。
そのため、税務調査の対象となった場合には、反面調査が行われないように誠意をもって対応する必要があるのです。 反面調査のリスクを回避するためには、以下のようなポイントを押さえておくとよいでしょう。

書類やデータはすべて保管しておく

過去の請求書、領収書といった書類や帳簿データは、申告が終わった後も必ず保管しておくようにしましょう。 月別や項目ごとにわかりやすくファイリングし、確認を求められたらすぐに提示できるような状態にしておくことも大切です。 通常の税務調査では、調査担当者が訪問する前に事前連絡があります。数日~1週間程度なら訪問日の調整にも対応してくれるため、税務調査が決まったら、3~5年分の書類はいつでも提出できるようにチェックしておきましょう。

調査時には協力的な態度で臨む

税務調査は、指定された日時に税務署の担当者が事務所を訪れ、1日~数日程度かけて実施されます。 調査中に受ける質問や確認事項については可能な限り協力し、曖昧な返事や感情的な態度を取らないようにしましょう。
とはいえ、担当者の中には威圧的な態度で調査を進めたり、はじめから疑ってかかるような質問をされたりするケースもあります。 調査に対して協力的な態度で臨むことは、税務署の言いなりになってすべて認めることではありません。 受けた質問が事実とことなる場合はしっかりと否定し、税務調査に必要ないと感じる要求には、毅然とした態度で応じましょう。

顧問税理士に同席を依頼する

顧問契約を結んでいる税理士がいる場合、税務調査の際に同席を依頼しましょう。税務調査の対応実績がある税理士なら、税務署からの質問や要求に対して、どのように対応すればよいかを熟知しています。税務のプロのサポートがあれば、反面調査を避けられる可能性も高まるでしょう。 現在顧問契約している税理士がいない場合や、契約していても同席に対応してくれない税理士の場合は、税務調査のサポート実績がある税理士事務所へ相談することをおすすめします。



反面調査を受ける場合の注意点と対処法

税務調査の際、調査に協力的でなかったり、申告内容を審査するための十分な資料がなかったりした場合は、取引先などに対して反面調査が行わる可能性があります。 反対に、取引先に税務調査が入った場合は、関係先の一つとして税務調査から反面調査を受ける可能性もあるでしょう。反面調査を受ける場合は、どのように対応すればよいのでしょうか。 反面調査を受ける際の注意点と対処法についてご説明します。

反面調査は突然行われる

税務調査は、一般的に税務署から事前の連絡があり、実地調査を行う日時が伝えられます。そのため、納税者は必要な帳簿や書類などの準備を行うことができるとともに、税理士に連絡を取って対応法を協議するといった準備もできます。
しかし、反面調査では予告は行われることはありません。もし、反面調査に入る旨の通知をすれば、取引先と事前に口裏合わせをしたり、調査官の目に触れてほしくない書類を隠蔽したりといった行為を招く恐れがあるからです。反面調査の目的は、調査対象者の事業の状況や資金の流れを正確に把握することであり、事前の通知によって不正が行われれば反面調査を行う意味がなくなってしまいます。
そのため、反面調査は突然行われることがほとんどであるということを覚えておきましょう。

反面調査は拒否できない

税務調査官による突然の訪問があり、反面調査が行われる場合、原則として反面調査を拒否することはできません。税務調査も任意調査ではありますが、税務調査を簡単に拒否できないことと同じように、反面調査も正当な理由なく拒否することはできないのです。もし、反面調査を拒否した場合には、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
ただし、突然の対応となるため、業務が忙しくて対応できない場合や担当者が不在のために対応できないケースもあるでしょう。そのような場合は、税務調査官にその旨を伝え、調査官が正当な理由であると判断すれば、日時を変更できる可能性があります。

反面調査では調査目的を確認し、必要な内容にのみ対応する

反面調査では、調査目的以上のことをしてはいけません。そのため、調査官の説明をしっかりと理解したうえで、反面調査に必要とされる帳簿や資料のみ提示するようにしましょう。反面調査に関係のない書類を提出すると、自社の情報や取引先の情報が漏洩する可能性があります。後々のトラブルを防ぐためにも、反面調査の際には調査に必要であると納得できた場合のみ、関係する帳簿や書類だけを提出することが大切です。
また、帳簿や書類を渡す際にもコピーを取って、調査官とのやり取りの証拠を残すことも忘れないようにしましょう。

質問には誠実に対応する

反面調査では、帳簿や書類の提示だけでなく、調査官から取引内容などについての質問がなされます。質問内容に対しては、虚偽の回答をすることなく、事実をそのまま伝えるようにしましょう。取引先とよい関係性を築いている場合などは、取引先を擁護したい気持ちから、調査官に対して不誠実は対応を取ってしまうこともあるかもしれません。
しかし、真摯な態度で反面調査に臨まない場合、隠していることがあるのではないかと疑いを強めてしまうこともあるでしょう。
また、質問への回答を拒否したり、虚偽の情報を提供したりすると、罰則が科せられる可能性もあります。質問に対しては、必要なことを事実に基づき、正しく説明するようにしましょう。

まとめ

反面調査とは、税務調査で自社だけでなく、取引先や銀行などにも問い合わせされる調査のことです。通常の税務調査だけでは実態の把握が難しいと税務署が判断した場合に、反面調査が実施されます。納税者は税務調査に協力する義務があるため、反面調査を拒否することは難しいものですが、税務調査への対応を熟知している税理士であれば、反面調査のリスクを回避するためのアドバイスを受けることも可能です。
税理士法人松本なら、無申告、脱税を続けて誰にも相談できない状況にも対応しています。初回の電話相談は無料で利用可能ですので、お気軽にお電話ください。



赤字会社に税務調査は来るのか?消費税の還付を受けている会社は注意が必要?

2023.10.31

赤字で申告している会社に、税務調査が来ることはあるのでしょうか。税務調査は、法人税や所得税の申告漏れだけをチェックするわけではありません。消費税についても厳しくチェックがなされています。消費税の還付を受けている場合や、損益通算して赤字にしている会社の場合も気になるところです。
ここでは、税務署による赤字会社への税務調査はどの程度あるのか、調査対象となりやすい法人の特徴、消費税についての税務調査の注意点などについて説明しています。赤字申告している場合の税務調査の可能性や、税務調査の対象となりやすい会社があるのか知りたいときの参考にしてください。赤字を偽装していまっているなど、やましい部分を顧問税理士に話せないなどお悩みの部分があれば、税理士法人松本までお気軽にご相談ください。



赤字で申告している会社にも税務調査は来る?

結論からいうと、赤字申告している会社であっても、税務調査が来る可能性はあるといえます。「税務署も人件費を出して調査するのだから、儲かっている会社しか調査へ行かない」などといわれることもあります。しかし、税務署の視点から見れば、一見儲かっていないような会社も充分調査対象となることがあるのです。

1件あたりの申告漏れ額や追徴税額は上昇している

国税庁のホームページでは、法人税や消費税、源泉所得税などに対する調査実績の概要として、毎年統計を公表しています。
2023年10月現在の最新データによると、令和3事務年度の税務調査実地件数は法人税及び消費税が約41,000件、源泉所得税では約48,000件の税務調査が実施されています。 前年度の調査件数がそれぞれ25,000件と29,000件であったことと比較すると、令和3年度は調査件数が前年の163%以上と大きく増加した印象です。
また、追徴税額を見てみると、令和3事務年度は約2,307,000円となっており、前年の1,936,000円の119.2%の額となっていました。 このことから、令和3年度は前年のコロナの影響もあり、税務調査件数自体も大きく増加し、追徴税額も増加しており、、大口・悪質な不正計算等が想定される法人に絞って調査を実施したことが伺えます。

簡易な接触調査の実施も

本格的な税務調査だけでなく、書面や電話連絡、税務署への来署依頼による面接といった簡易な接触は法人税及び消費税が67,000件、源泉所得税が129,000件ほど実施されたことも公表されています。 簡易な接触とはいえ、納税者へ申告内容に関する指摘を行い、修正申告を促す点は実地調査と同じです。 簡易な接触によって、104億円(法人税・消費税)と78億円(源泉所得税)の追徴税額が発生している事実から、簡易な接触による調査は今後も継続されると予想されます。

赤字会社でも申告内容に誤りがあれば調査対象となる

税務署では、単純な売上や利益の大きさよりも「申告内容に不審な点や誤りがないか」「申告漏れや過少申告がないか」という視点で調査や情報収集をしています。 税務調査の目的は、適正な申告・納税を促すことにあるため、黒字と赤字に関わらず、常にすべての会社が税務調査の対象となっていると考えた方がよいでしょう。
とはいえ、毎年実施できる税務調査の件数は限られています。税務調査に選ばれやすい法人の特徴などについて、以下で更に詳しく見ていきましょう。

税務調査の対象となりやすい法人の特徴

税務調査の対象として選ばれやすい法人の特徴には、以下のような点が挙げられます。

赤字を偽装している会社

実際は黒字であるにも関わらず、帳簿操作などで赤字に偽装している会社は、税務署から調査対象とされている可能性があります。
・経費の水増し
・売上の期ズレ
・赤字の欠損繰戻し
などがある法人は、特に注意が必要です。
特に欠損繰戻しによる還付については、申請があった場合には欠損の事実を調査する必要があります。そのため、申請したことによって事実がバレたり、偽装を指摘されたりする場合があるのです。

消費税の還付を受けている会社

赤字の偽装と並び、調査対象となりやすいのが消費税の還付を受けている会社です。国税庁では、消費税の不正還付を受けた会社から、総額34億円の不正還付を発見し、219億円も追徴した事実を公表しています。 架空の仕入れがあったように見せかけて書類を作成したり、消費税が免除となる海外へ売上があったように偽装していたりした場合も、調査対象となりやすいでしょう。 欠損の繰戻しと同様に、消費税還付申告書を提出した会社も、本当に還付を受けられる会社かどうかを調査される可能性があると考えた方がよいでしょう。消費税の還付について税務署から問合せが入っている方は税理士法人松本までご相談ください。



不正が発見されやすい業種

税務署や国税庁では、過去の膨大なデータから、申告漏れや追徴課税、申告内容の誤りなどが発生しやすい業種についても公表しています。
令和3事務年度における不正発見割合の高い業種には、以下のようなものが挙げられています。
・その他の道路貨物運送
・医療保健
・職別土木建築工事
・土木工事
・その他の飲食
・化粧品小売
・美容
・機械修理
・一般土木建築工事
・貨物自動車運送

こうした業種に該当する会社の場合、その他の会社よりも調査対象となる可能性が高いかもしれません。

税務調査では消費税についても厳しいチェックが行われる

税務調査と聞くと法人税や所得税に注目が行きがちです。
しかし、前述したように税務調査の実施件数は「法人税及び消費税」というくくりで報告がなされています。これは、法人税の申告内容だけでなく、消費税の申告内容についても税務調査では厳しくチェックされるということを示しているのです。

税務調査で消費税が調査される理由とは

現在、軽減税率が適用される酒類・外食を除く飲食料品以外の消費税の税率は、10%です。2019年10月に消費税の税率が10%に引き上げられたことで、消費税として納税すべき額も大きくなりました。このことも税務署が税務調査時に重点的に消費税を調べることに影響を及ぼしていると考えられます。
また、消費税は、商品やサービスを購入される際に課される税金であり、企業は消費税を消費者から徴収し、納税する義務があります。そのため、法人税や所得税と異なり、消費税は消費者から一時的に預かり、企業から納税するという特徴があるのです。そのため、税務調査においては、他人から受け取った税金である消費税を正しく納税しているかどうかを厳しくチェックしなければならないという意識が働くと考えられます。 実際、税務調査において法人税や所得税の申告漏れが数千万円の場合、重加算税が課せられるケースは多くはありません。しかし、消費税の場合は申告漏れが数千万円程度であっても、税務署による税務調査から国税局査察部に引き継がれ、査察調査を行ったうえで、検察に告発されている事例があるのです。

税務調査における消費税のチェックポイント

消費税にかかる税務調査は、どのように進められるのでしょうか。税務調査でチェックされやすいポイントについてご説明します。

消費税だけを対象とした税務調査は行われない

まず、税務調査において消費税だけを調査するケースはほとんどありません。法人税や所得税の調査と同時に消費税についての調査も行われることがほとんどです。消費税は、赤字の会社であっても納税する義務があります。消費者が支払った税金を、企業が預かっている形になるため、赤字であっても黒字であっても、消費税は納税しなければならないのです。
そのため、赤字の会社であっても税務調査の対象となり、法人税と合わせて消費税についても調査が行われることになります。

消費税の申告を怠っていないか

消費税の納税義務がある事業者は、基準期間である前々事業年度の課税売上高が1,000万円を超える法人です。また、課税売上高が1,000万円以下であってもインボイス制度のスタートに伴い、適格請求書発行事業者として登録した場合は、課税事業者となります。 事業者の中には、売上を隠蔽するなどして課税売上高が1,000万円以下になるよう調整をしているケースがあるのです。売上額を不正に調整していれば、法人税だけでなく消費税にも影響を与える可能性があります。消費税の納税義務がある法人が正しく消費税の申告を行っているかどうかは、税務調査における消費税調査の大きなチェックポイントとなるでしょう。

仕入税額控除の算定が正しいか

先ほどもご説明しましたが、消費税の不正還付が税務調査で指摘されている例は多くあります。消費税の仕入税額控除の算定は、ミスも起こりやすく、税務調査で指摘されやすい事項なのです。課税対象ではない取引を課税取引として仕入税額控除の対象としていた場合、消費税の納付額は少なくなります。
そのため、税務調査では消費税の仕入税額控除の算定が正しく行われるかどうかも詳しくチェックされます。

簡易課税制度の活用が正しくなされているか

簡易課税制度とは、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の中小事業者の納税事務負担を軽減することを目的に設けられた制度です。簡易課税制度の適用を受けるためには、基準期間の課税売上高が5,000万円以下であり、事前に「消費税簡易課税制度選択届出書」を税務署に提出している必要があります。簡易課税制度を利用している場合、税務調査ではまず、事業者に簡易課税制度の適用資格があるかどうかの調査がなされます。
また、簡易課税制度では、消費者から受け取った消費税額にみなし仕入れ率といわれる割合をかけて計算をします。みなし仕入れ率は、業種によって細かく分けられているため、自社が該当する業種のみなし仕入れ率を使って正しく消費税の計算がなされているかについての確認も税務調査時に行われます。

申告内容に不安があるなら税理士へ相談しよう

税務調査で申告漏れや誤りが発覚した場合、修正申告が必要になります。赤字として申告していた場合でも、申告漏れなどによって黒字に転換すれば、不足分の法人税や消費税が追徴されるだけでなく、過少申告加算税や延滞税なども支払わなければなりません。特に消費税の申告を怠っていた場合や消費税の仕入税額控除の算定を誤っていた場合、追徴される額は大きくなり、会社にかかる負担も重くなるはずです。「正しい申告をしていればよかった」と後悔しないためにも、申告は正しく行うことをおすすめします。
誤りや偽装をしていないつもりでも、計算ミスやうっかり忘れなどから、既に申告した内容に誤りが見つかる可能性も充分あるでしょう。 過去の申告内容に少しでも不安のある方は、税理士に相談してアドバイスを受けてみるのもよいでしょう。 赤字決算や中小規模の法人税申告、税務調査対応などに強い税理士事務所なら、1人で悩むよりも心強いサポートが受けられるでしょう。



まとめ

赤字会社であっても税務調査が来る可能性は充分あり、むしろ消費税の還付や欠損繰戻しによる還付などを申請することで、かえって周辺調査を実施される可能性が高まるケースもあります。
とはいえ、正しい申告を行っていれば、申告漏れや税務調査を必要以上に怖れる必要はありません。不正が発覚する割合が高い業種に該当していたり、過去に消費税の還付申告を受けた実績があったりするなどして不安がある場合は、税理士のサポートを受けると安心です。初回無料電話相談などを利用して、話しやすく信頼できる税理士や、税務調査対策の知識が豊富な税理士を見つけておくとよいでしょう。

こちらの記事は幻冬舎GOLD ONLINEにも掲載されております。


税務調査で個人通帳を見せろと言われた!見せなきゃいけないの?

2023.10.31

税務署から税務調査が入った際、資料として通帳の提示が求められるケースがあります。事業用の口座だけではなく、個人名義の通帳を見せるように言われたら、必ず見せなければならないのでしょうか。
ここでは、個人事業主に税務調査が入った際、税務署に通帳の提示を求められる可能性や対処法などについて解説しています。



税務調査で個人通帳の提示を求められることはある?

結論から言うと、個人事業主のもとへ税務調査が入った場合、個人名義の通帳や取引履歴を見せるように求められる可能性はあります。

税務調査で調査官が通帳を確認する理由とは

税務調査で、調査官から通帳の提示を求められるケースは少なくありません。なぜ、調査官は通帳を税務調査の資料として利用するのでしょうか。それは、通帳は他の帳簿や書類と違い、改ざんしにくい資料だからです。帳簿は、個人事業主が入力する数字で作られています。そのため、事業の状況に合わせて数字を調節し、改ざんすることもできてしまうのです。
しかしながら、通帳は取引内容が自動的に印字されるもので、個人事業主が勝手に通帳の数字を操作することはできません。従って、通帳を確認するとお金の動きを把握しやすいのです。

個人名義の通帳の提示を求める理由は?

個人事業主に対し、個人名義の口座の通帳の提示を求める場合、帳簿に記載されている額と整合性が取れているか、不審なお金の動きはないかという点を確認したいという目的があります。 申告書に記載されている所得と比べて入金されている額が大きかったり、定期的に入金があったりする場合は、所得を低く装っているか、どこか別のルートで所得を得ている可能性があると考えられるのです。

税務調査で通帳を見せるように言われたらどうすればよい?

税務調査の際に通帳を見せるように言われたら、求めに応じて通帳を見せなければならないのでしょうか。通帳を提示する必要性について、ケースごとにご説明します。

事業用の通帳は提示しなければならない

事業用と個人用の口座を分けている場合、事業用の通帳の提示を求められた場合には、求めに応じて調査官に通帳を提示しなければなりません。事業用の通帳は、国税通則法第74条において定められている「その者の事業に関する帳簿書類その他の物件」に含まれるものであると考えられています。
そのため、税務調査時に調査官から、事業用の口座の通帳を見せるよう求められたら、応じなければならないのです。

個人通帳の提示を求められても拒否できるケースとは

事業用の通帳は、求められれば調査官に提示しなければなりません。では、個人名義の口座の通帳の場合はどうなのでしょうか。 個人名義の通帳の場合は、税務調査で提示を求められた場合に拒否できるケースがあります。それは、個人名義の口座と事業用の口座を完全に区分して管理している場合です。
そのような場合は、税務調査で個人名義の通帳や取引履歴の提示を求められたとしても、「個人の通帳は事業に使用していません」と伝えて、拒否することができます。

株式会社の税務調査でも個人通帳の提示を拒否できるケースは?

個人事業主に限らず、株式会社など法人企業に税務調査が入った場合でも、代表者名義の個人通帳の提示を求められるケースがあります。
そのようなケースでも、代表者名義の個人通帳は一切事業に使っておらず、事業用と個人用の口座を区別しているのであれば、通帳の提示を拒否できます。 自宅の家賃や水道光熱費、生活費に使用しているクレジットカードの引き落としなど、事業と関係のない入出金だけである場合、個人口座は税務調査でチェックするべきものではないからです。
ただし、個人の通帳に売上が入ってしまっており、どうしたらよいか不安な方は税理士法人松本までお気軽にご相談ください。



税務調査で通帳の提示を拒否できるのは、あくまでも「事業用と個人用の通帳が明確に分けられている場合」に限られます。
しかし、自分では明確に分けているつもりでも、実際にはしっかりと区分されていないケースもあるかもしれません。税務調査で個人通帳の提示を拒否できないケースはあるのでしょうか。

個人通帳の提示をしなければならないのはどんなケース?

税務調査で個人通帳を見せる必要があるケースには、以下のようなものが挙げられます。

自宅をオフィス使用し、家賃を按分している

個人事業主の場合、自宅兼オフィスのような形で一部を仕事部屋にし、自宅の家賃を按分して地代家賃として計上している人もいるでしょう。この家賃の引き落としを個人口座から行っている場合は、該当する箇所の通帳履歴を提示する必要があります。

水道光熱費を按分している

自宅の一部をオフィスとして使用している場合、家賃と同様に、電気代や水道代などを生活費と事業用経費で按分しているケースもあるでしょう。水道光熱費を個人口座から引き落とししている場合も、個人名義の口座を事業用に使用していることになります。この場合も、該当する箇所の通帳の履歴を提示する必要があります。

売上の一部が個人口座に入金されている

得意先によっては、振込時に手数料が発生するために事業用の口座を開設している銀行ではなく、指定の銀行に口座を開いてほしいと希望されるケースがあります。そのような場合、個人名義で指定銀行に口座を開設していれば、個人口座を振込先として利用することもあるでしょう。このような事情がある場合でも、売上が個人口座へ入金されていれば、求めに応じて該当部分の通帳を提示する必要があります。

文房具や備品などを個人口座のカードで支払った

プライベートな買い物のついでに、デビットカードなどを使用してビジネス用の備品や消耗品、文房具、書籍などを購入した場合も、口座取引の履歴確認を求められる場合があるでしょう。

現金取引が多いなど収支の履歴が曖昧な場合

売上や仕入れに現金取引が多く、事業用の口座だけでは取引の確認がしづらい場合や、所得隠しが疑わしいような場合にも、個人通帳を見せるように求められる場合があります。

個人名義の通帳の提示の必要性を判断するポイント

税務調査で個人名義の通帳を提示するよう求められた場合、通帳の提示を拒否できるかできないかの判断のポイントは、次の2点です。
・個人名義の銀行から事業に関連する入出金を行っていないか
・事業用と個人用で使用する口座を明確に分けているか
前述したように、自分では明確にプライベートと事業用で口座を分けているつもりでも、家賃や光熱費を按分しており、個人名義の口座から引き落とししている場合は、明確に分けているとは言えません。 個人口座の通帳はプライベートな支出や入金が分かるものでもあり、プライバシーを保護したいという気持ちが強いのであれば、事業用と個人用の口座を明確に区分しておくようにしましょう。

個人通帳の提示を拒否できるのに提示を求められたら?

事業用と個人用で通帳をしっかり分けて使用しているなら、本来個人用の通帳はプライベートなものであり、税務調査で見せる必要のないものです。
しかし、税務調査にあたる調査官によっては、特に根拠がなくても個人通帳の提示を求められる可能性もあります。

提示する根拠がない場合は拒否できる

税務調査を受けているときは何となく緊張したり焦ったりして、言われたことにはすべて従わなければならないような気持ちになる場合も少なくないでしょう。
とはいえ、提出するべき根拠のないものやあらぬ疑いについては、しっかりと説明した上で毅然とした態度を取ることが大切です。 個人用の通帳は事業用途に一切使っていないのであれば、その旨を伝えましょう。それでも提示を求められる場合は「提示するべき根拠はあるのでしょうか」と質問をします。根拠を要求しても調査官から明確な根拠が示されないときには、通帳の提示を拒否することもできます。

国税庁の通帳の提示に対する見解

国税庁でも、調査目的で資料の提示を求める際には、しっかりと根拠を説明した上で調査対象事業者の理解を得るよう努めるといった趣旨の説明がなされています。

国税庁ホームページ:税務調査手続に関するFAQ
この国税庁のQ&Aの中には、通帳の提示についての質問と回答例も掲載されています。法人税の調査と記載されていますが、個人事業主を対象とした税務調査でも同様であると解釈できる例をご紹介しましょう。

問7 法人税の調査の過程で帳簿書類等の提示・提出を求められることがありますが、対象となる帳簿書類等が私物である場合には求めを断ることができますか。

答え:法令上、調査担当者は、調査について必要があるときは、帳簿書類等の提示・提出を求め、これを検査することができるものとされています。
この場合に、例えば法人税の調査において、その法人の代表者名義の個人預金について事業関連性が疑われる場合にその通帳の提示・提出を求めることは、法令上認められた質問検査等の範囲に含まれるものと考えられます。
調査担当者は、その帳簿書類等の提示・提出が必要とされる趣旨を説明し、ご理解を得られるよう努めることとしていますので、調査へのご協力をお願いします。

つまり、個人口座の通帳の開示が必要になるのは、事業との関連性が疑われる場合に限られるわけです。個人名義の通帳と、事業との関連性が疑われるような根拠が特にないのであれば、プライベートでのみ使用している銀行口座を見せる必要はないと理解してよいでしょう。

見られても問題ないなら提示した方がスムーズな場合も

とはいえ「個人用通帳を見せてほしい」と税務調査で言われる場合、税務署の方でも何か不明点や疑わしい点があり、その点をクリアにして早く調査を先へ進めたいと考えているケースが多いものです。 あまり頑なに拒否し過ぎることで、かえって疑惑を深めてしまう可能性もあるため、特に通帳を提示しても問題がない場合は、見せた方がスムーズだと言えるでしょう。

根拠の判断が難しい場合は税理士へ相談を

経営者や代表として働いていると、通常の業務や営業で忙しい中、帳簿や取引のすべてを完全に把握するのは難しいケースもあります。 事業と個人の口座はしっかりと分けているつもりでも、もしかしたらうっかり見落としていることもあるかもしれません。特に税務署との交渉においては、税金や会計に関する知識が足りないと、知らないうちに生活費と経費が混同されている場合もあるでしょう。 税務調査が入る場合、比較的丁寧に帳簿を管理している事業者ほど、重箱の隅をつつくような追及にあうことも少なくありません。個人口座と事業との関連性について、根拠の判断が難しい場合や、税務署との交渉に不安を感じるなら、一度税務調査の対応に強い税理士へ相談してみるとよいでしょう。



まとめ

税務調査で個人名義の通帳を見せるように言われても、事業と完全に切り離して使用している口座であれば見せる必要はなく、提示を求められても拒否することが可能です。ただし、うっかり事業用に使っている場合や、税務署から根拠となる関連性について納得できる説明を受けた場合には、個人通帳を提示する必要があります。 個人通帳と事業とが完全に分けられているか、税務調査で指摘を受ける要素がないかなど、少しでも不安な点がある場合は、税理士事務所でアドバイスを受けてみましょう。

国税局の査察調査と税務署の税務調査の違いとは?

2023.10.31

税務調査は、事業を営んでいる納税者なら、誰でも受ける可能性があるといわれています。しかし、実際には国税局が行う「査察調査」や税務署が行う「税務調査」などの種類があり、それぞれ異なる調査の側面があるのも事実です。
そこで、ここでは国税局の査察調査と税務署の税務調査は何が違うのかについて、わかりやすく紹介しています。 すでに調査が入っていて、今後の対応にお困りの方は税理士法人松本までお気軽にご相談ください。



似ているようで違う査察調査と税務調査

査察調査も税務調査も税に関する調査です。しかし、両者は似ているようで大きな違いがあります。まず、それぞれの違いを知る前に査察調査と税務調査の概要をご紹介しましょう。

査察調査とは

査察調査は、意図的に売上や所得を隠蔽し、税金を免れようとしたいわゆる脱税の疑いがある企業や個人事業主に対して行う調査です。脱税は犯罪であり、査察調査の目的は正しい税金を納めさせるだけではありません。査察調査では、捜索や差押などを行って証拠の収集を行い、検察へ告発することも目的としています。つまり、査察調査は脱税犯の摘発を目的とし、その他の犯罪の捜査と同じような方法で調査が行われるのです。
ただし、査察調査で脱税が発覚した場合、その他の事件のようにその場で脱税を犯した人を逮捕するわけではありません。脱税の証拠がそろったら検察庁に告発し、検察官による操作が行われた後に、逮捕に至ります。

税務調査とは

税務調査は、納税者が所得税や法人税、消費税を正しく申告をしているか、申告漏れがないかどうかの確認をすることを目的とした調査です。税務調査と査察調査の区別がしっかりついていない場合は、テレビなどで見かけることがある査察調査と同じようなイメージをお持ちになるケースもあるでしょう。
しかし、税務調査は査察調査のように、いきなり複数の捜査員が事務所や店舗などに入り込むことはありません。税務調査では、犯罪捜査のように捜索や差押などが伴うことはなく、検察に告発されるケースもないと考えてよいでしょう。税務調査は刑事事件にまで発展する査察調査とは異なり、申告内容が正しいかどうかのチェックを行い、申告漏れが生じていた場合には、正しい額の納税を求めることを目的とした調査なのです。

ここが違う!査察調査と税務調査

査察調査と税務調査では、以下のような点が異なります。

査察調査は国税局、税務調査は税務署の管轄

税務調査は、事業者を管轄している各税務署に所属する調査官によって行われます。一方、査察調査は国税局の査察部が行う調査です。
そのため、税務調査で調査に訪れる職員は税務署の職員となり、査察調査で訪れる職員は国税局の査察官となります。

査察調査は強制、税務調査は任意で行われる調査

査察調査は、国税局の査察部によって行われる強制的な調査です。裁判所から操作・差押などに関する許可状を得て行われる強制調査であるため、査察調査を拒否することはできません。
一方、税務調査は納税者の任意で行われる調査です。ただし、任意調査とは呼ばれているものの、納税者は税務調査を拒否することはできません。
しかし、任意調査である以上、査察調査のように調査官が事務所などを訪れ、納税者の許可を得ずに、勝手に帳簿を抜き出したり、書類を持ち出すたりすることはできないのです。

査察調査と税務調査は基づく法律も異なる

査察調査と税務調査は、基づく法律もそれぞれ異なります。税務調査は国税通則法に則って手続きが取られることとなり、査察調査は国税犯則取締法を基にして行われます。 2つの法律の名称を比較するだけでも、税務調査と査察調査が違った目的で行われていることがわかるのではないでしょうか。 基本的に、税務調査は適正な申告や納税ができているか、間違っていた場合には指摘や指導をしていくという目的で行われるものです。会社やフリーランスなど、事業を営んでいる法人、個人事業主すべてが調査の対象となります。
一方で、査察調査は悪質かつ多額の脱税行為が疑われる場合に、犯罪の証拠を押さえる目的で行われるという違いがあるのです。

流れで比較!査察調査と税務調査の違い

査察調査と税務調査は、調査の流れにも以下のような違いがあります。

税務調査の流れ

税務調査でもっとも多く行われるのは「任意調査」と呼ばれるものです。任意調査の流れをご紹介します。

税務調査では事前通知がなされる

税務調査では、ほとんどのケースにおいていきなり調査官が現場を訪れることはありません。税務署から「〇月〇日に税務調査で訪問したい」という連絡が事前に入ってから調査が行われます。 事前連絡は調査日の1週間ほど前くらいに電話などで受けるのが一般的で、調査日についても、業務上の理由や健康上の理由などで都合がつかないなど、正当な理由があれば延期や変更なども可能です。

必要な帳簿や書類を準備する

税務署からの事前通知の際、税務調査時に必要となる書類や帳簿が伝えられます。調査をスムーズに進めるためにも、会社の組織図や帳簿、決算書類など、必要な書類を事前に準備しておきます。

実地調査は2日程度

調査当日は、税務署から調査官が派遣されます。「帳簿を見せてもらえますか」「売上の入出金履歴を確認してもいいですか」など、調査の説明や確認も同意を取りながら進められるでしょう。
ただし、任意調査とはいえ、調査の実施については拒否することはできません。納税者には「受忍義務」と呼ばれる義務があり、税務調査の依頼があれば、協力しなければならないと法律で定められているからです。 帳簿やパソコンのデータなども、確認してよいか同意を求められるため、見せたくなければ拒否することが可能です。しかし、ケースによっては調査を妨害しているとみなされ、ペナルティの対象とされる可能性もあるため注意が必要となります。 必要に応じて実地調査後にも確認の連絡が入るケースもありますが、税務調査にかかる期間は2日から数日程度です。

調査結果の説明

調査が完了したら、税務署から結果が報告されます。申告内容に問題がなかった場合には、是認報告が届きます。是認報告が届いた場合は特に必要な対応はありません。
また、申告内容に不備があると指摘された場合には、税務署から指摘された箇所について修正申告を行い、必要に応じて不足分の税金や加算税を支払えば、税務調査は終了です。

査察調査の流れ

査察調査は、上記で説明した税務調査とは異なり、何の前触れもなくある日突然、査察官が乗り込んできます。査察調査は犯罪の証拠を押収したり、脱税の疑いがある事業者の逃亡を阻止したりする目的を持つ、強制的な調査となるからです。

査察部門による情報収集

査察部門では、水面下で脱税に関する情報収集を行います。税務調査の結果、多額の脱税が発覚し、手口が悪質であると判断された場合は、査察部門に情報が引き継がれるケースもあります。

裁判所へ許可状の請求

強制調査の際に差押や捜索などを行うため、裁判所に許可状を請求します。

強制調査

裁判所の許可状を元に、強制調査が行われます。査察調査では、本社や事務所のみならず、工場や支店、店舗、共謀の疑いがある取引先、社長の自宅なども調査の対象となります。証拠隠しや逃亡を防ぐため、同じタイミングで一斉に調査が行われるのです。 テレビや映画、ニュースなどで、スーツを着た大勢の査察官が一斉に乗り込み、大量の書類が入った段ボールや金庫などを押収していくシーンなどを目にすることがあります。こうした映像は、税務調査ではなく査察調査で見られる光景です。 各種帳簿やファイルなどは同意なく押収され、パソコンごと持ち出される場合もあります。調査にかかる期間は短い場合でも数ヵ月を要し、長い場合は1年以上におよぶことも少なくありません。

検察への告発

検察との間で協議が行われ、告発が容認された場合、査察部門が検察に告発をします。

検察による捜査・起訴

告発を受けると、検察官による捜査が行われます。再度、捜索や差押、取り調べが行われ、場合によっては脱税容疑で逮捕・勾留がなされるケースもあります。勾留期間中に起訴・不起訴の判断が行われ、起訴することが決まれば刑事裁判に訴えられることとなります。

地方裁判所での刑事裁判・判決

起訴されると、被告人の立場となり、刑事裁判が行われます。脱税が認められ、有罪の判決が下されると、最長で懲役10年と罰金が科されます。 令和4年度の場合、一審判決では起訴された61件全てに有罪判決が言い渡されており、査察事件単独で最も重いものは懲役1年4ヶ月でした。

調査完了後は、多くの場合脱税に関して刑事告発され、懲役や罰金などの刑事罰に処される可能性があるのも、査察調査が税務調査と大きく異なる点であるといえるでしょう。

税務調査と査察調査での対処法はどう違う?

税務調査と査察調査は、それぞれ異なる点があるものの、基本的な対処法は以下の通りとなります。

調査には協力しても、毅然とした対応を

税務調査も査察調査も、調査を妨害しているとみなされる行為はペナルティの対象となってしまうため、調査中は協力しなければなりません。しかし、調査官や査察官の追及や指摘について、何でも認めなければならないわけではありません。
計上ミスや勘違い、申告漏れなどを意図的に操作したり、悪意を持ってごまかしたりしているのではないか、といった疑いを持たれることもあるでしょう。そうした場合でも、事実でなければ毅然と対応することが大切です。 攻撃的な態度を取るのではなく、事実に基づいた主張をする、という姿勢で対応します。調査で追及されて怯えたり、緊張してしまったりして何でも認めてしまう、または曖昧な返事をする、といった対応は避けましょう。
調査段階では、事前に証拠を掴んでいるケースも多いですが、悪質性が高い可能性があるかどうかを探りながら調査している場合もあります。 脱税しているといえるか微妙なラインや、修正が必要な申告の額について、実際よりも多く見積もられているなら、正当な主張をして交渉が必要となるでしょう。

対応に不安がある場合は税理士へ相談しよう

「調査中にしっかりと対応できる自信がない」「何を認めてよいのかわからない」など、査察調査や税務調査に不安がある場合は、税金の専門家である税理士へ相談することをおすすめします。 査察調査を受けた場合、これまでの状況を見るとかなりの高い確率で検察に告発されることとなります。納税者側の主張を正しく伝えるためにも、査察調査のサポートをしている税理士に一度相談してみるのも手段の1つです。
また、税務調査の場合には、税務署から事前通知が行われます。税務調査の日時を調整することもできるため、税理士に相談をし、税理士が立ち会える日時で調査日を調整するとよいでしょう。 税務調査や査察調査の対応実績がある税理士事務所なら、調査への同席や意見書の提出など、税務署や国税局への対応に心強いサポートを受けることができます。



まとめ

国税局の査察調査と税務署の税務調査は、管轄や法律、調査方法など、異なる点が多くあります。基本的に、どちらの調査も拒否することはできませんが、事実と違う疑いをかけられた場合には、毅然とした対応が必要です。 調査の対応に不安がある場合には、税務署との交渉に強い税理士へ相談しながら進めていくとよいでしょう。

税務調査で否認される外注費と給与の判断基準とは?争点になりやすいポイントをわかりやすく解説!

2023.10.30

業務委託などで外注費が発生している場合でも、税務調査で外注費が否認されてしまう場合があるのをご存じでしょうか。 ここでは、外注費と給与の違いや、税務調査で外注費が否認された判断基準などについてわかりやすく解説しています。外注費を否認されないための対処法やポイントについても紹介していますので、業務委託を行う際の参考としてお役立てください。
現在、税務調査中で外注を雇用だと指摘されていたり、源泉所得税について指摘が入っていたりしている方は税理士法人松本までお気軽にご相談ください。



給与と外注費の違いとは

外注費と給与の主な違いは、以下のようになります。

給与は雇用している従業員へ役務の対価として支払う

給与は、雇用している従業員へ労働の対価として支払うものです。従業員は、雇用時に事業主と雇用契約書を締結し、法律と契約に基づいて労働をします。事業主は、雇用契約中の労働日数や労働時間を計算し、毎月定められた日に所定の給与を支払い、必要に応じて社会保険加入や源泉徴収を行います。

外注費は業務委託している外注先へ成果の報酬として支払う

一方、業務委託は仕事を完成させることを目的に取引先と契約を結び、その結果に対して報酬を支払うものです。業務委託をする際には業務委託契約書や請負契約書などを締結しますが、外注の場合、残業や労働時間の規制などは基本的にありません。 また、外注の場合は支払いも仕事の依頼に応じて定期または不定期になり、労働保険や社会保険加入の義務もありません。
なお、従業員の給与にかかる消費税は不課税となり、インボイス登録事業者であれば、外注費にかかる消費税は課税仕入れ扱いとなります。

支払手数料と外注費の違い

給与と同様に外注費と混同しやすいものに支払手数料があります。 支払手数料とは、弁護士や税理士、会計士などに業務を依頼した場合に発生する費用を計上する勘定科目です。例えば税理士に申告業務を依頼したり、税務調査の対応を依頼したりする場合の費用は、支払手数料として処理します。
しかし、業務を外部に委託することから、支払手数料と計上すべきものを外注費として処理してしまうケースがあるようです。 士業にあたるサービスに対して支払う報酬は、外注費ではなく、支払手数料となることも覚えておきましょう。

税務調査で外注費の指摘を受けやすい理由

税務調査の際、外注費について指摘を受けたり、否認されたりするのは、以下のような理由によります。

給与よりも外注費とした方が低コストとなる

従業員を雇用して給与を支払う場合、社会保険の対象となる勤務体系であれば労働保険や社会保険の加入義務など、給与以外にも支払うべきコストが発生しますが、外注費の場合はこうした義務が原則ありません。
また、外注の場合は依頼した仕事に対する成果報酬となりますが、雇用している間は労働時間や契約内容に応じて、毎月給与を支払う必要があります。 そのため、従業員を雇用して給与を支払うよりも業務委託を締結し、外部に委託する外注費という形態をとった方が、企業の負担するコストは低くなるのです。

インボイス登録事業者の外注費は消費税の仕入税額控除が可能

インボイス登録事業者の外注費は消費税が課税仕入れ扱いとなります。外注費として支払った消費税は、納税する消費税から控除することが可能です。一方、給与の場合、消費税の課税対象とはなりません。 外注となる業務委託の場合、働き方改革による残業の制限などの影響もないため、企業や経営者としては、従業員を雇用するよりも外注費として計上することで、節税面や事業運営の面でメリットが大きくなる場合が多いのです。
こうした理由から、税務調査では税金逃れなどを目的に、本来給与として計上するべき支払いを外注費としていないかがチェックされ、指摘を受けやすくなっています。

税務調査で外注費を否認される判断基準とは

税務調査で外注費か給与にあたるかを判断する際には、まず「雇用契約があるかどうか」から確認されます。雇用契約を結んでいる場合は、企業が雇用主となるため、そこで支払いが生じる費用は給与とみなされます。
一方、請負契約や業務委託契約の場合は、仕事の結果に対して報酬を支払う契約となるため、この時に支払いが生じる費用は外注費となります。
しかしながら、実際には業務委託契約書があるだけで外注費に該当するか、給与となるかの判断が難しいケースは少なくありません。そこで、税務調査では外注費か給与かを判断する基準として、実態を確認することになります。実態の判断基準として用いられるのは次の6つのポイントです。

代替可能な業務であるかどうか

例えば、雇用している従業員が担当するべき業務について、その従業員の代わりに外部の第三者を連れて来て担当させることは通常はありません。 しかし、外注に出している場合には、同じ業務を別の外注先が代行したり、下請けや孫請けに出したりといったことも可能です。代替可能な業務であるかどうかは、外注費と認められるかの争点となるケースもあります。

外注先から請求書が発行されているかどうか

外注先から発行された請求書がないにもかかわらず、外注費として計上されている場合は税務調査で指摘されやすい状態です。請求書がなければ、外注ではなく、雇用契約に該当するのではとみなされてしまう可能性が出てきます。

事業者の指揮監督下にあるかどうか

給与と外注費の違いとして、雇用関係とみなされるかどうかは重要なポイントです。給与は成果物に対してではなく、労働への対価となります。そのため「〇時から〇時まで」のように、1日あたりの労働時間が決められており、従事する業務についても、マニュアルなどで細かく指示を受けることとなるのが一般的です。
一方、外注の場合は成果物への対価となるため、労働時間に関わらず役務提供の有無によって報酬が支払われることとなります。成果への取り組み方についても細かく指示を受けることなく、基本的には自由に従事することが可能です。
具体的には、
・勤務時間の指定はあるか
・勤務場所の指定はあるか
・旅費、交通費を会社が負担しているか
・報酬の最低保障があるか
といった場合には、外注費でなく給与ではないか、と指摘される可能性が高まるでしょう。

時間的な拘束がなされているか

勤務時間の指定がなされているだけでなく、報酬が時間単位で計算されている場合など、報酬の支払者から時間的な拘束を受けている場合、給与ではないかと指摘される可能性は高くなります。外注の場合、成果物の完成を持って報酬の支払いを行うため、成果物の完成までにどのくらいの時間を費やしたかという点は報酬に影響しないのです。したがって、報酬の支払いにおいて、成果物ではなく、作業時間が関係していると捉えられる場合は、給与とみなされる確率が高くなります。

成果を納品できなかった場合でも対価が発生するかどうか

給与は労働に対する対価であるため、業務によって得るべき成果が出なかった場合でも、労働した時間に対する給与は支払われることとなります。
しかし、外注の場合は成果に対する報酬となるため、成果を提供できなかった場合には、原則として報酬を得ることはできません。 給与の場合は、支払う側が細かく指示管理を行うことができる一方で、希望する成果が得られなかった場合でも、労働時間に応じて支払いが発生するのに対し、外注の場合は業務へ従事する際の自由度が高い反面、成果を提供できなければ報酬が発生しないリスクを負うという違いがあります。

作業に必要な材料を支給しているか

外注をする場合は、成果物を完成させるための作業に必要となる材料や機材などは、外注先が自ら用意しなければなりません。しかし、発注元が資材を支給していたり、材料費を負担していたりする場合は、外注費とはみなされない可能性があります。
このほかにも、業務にあたる際に必要な備品や制服などが支給されている、食事手当や通勤手当が出ているといった場合も注意が必要です。税務調査で外注費が否認される際には、こうした点を総合して勘案されることが多いでしょう。

外注費が給与として認定されるとどうなる?

税務調査で外注費として計上していた額を給与として認定されてしまうとどのようなリスクがあるのでしょうか。外注費が給与認定される場合のリスクについてご説明します。

源泉所得税の追徴課税が行われる

外注費が否認され、雇用関係にあると指摘された場合、外注費は給与として認定されます。給与であれば源泉所得税の納税義務があるため、外注費が否認されると源泉所得税の徴収漏れとなり、徴収漏れ分の税金や追徴課税が行われます。

不納付加算税・延滞税等が加算される

源泉所得税の不足分の課税がなされると同時に、不納付加算税や延滞税も加算されます。 不納付加算税とは、事業主が従業員から源泉徴収した所得税を納付期限内に支払わなかった場合に加算される税金です。税務調査で指摘を受けた場合には、納付すべき所得税の10%が不納付加算税として加算されます。
また、延滞税は期限までにしかるべき税金を納付しなかった場合に課せられる税金です。延滞税は、納付期限の翌日から完納される日までの日数を基に計算されます。令和3年1月1日以後の割合の延滞税の税率は、納付期限の翌月から2か月までの期間は2.4%、納付期限の翌日から2か月を経過する日の翌日以降からは8.7%となっています。

消費税の仕入税額控除が否認され、消費税の負担が増える

前述したように外注費として処理していた場合は、外注費分の消費税を仕入税額控除していたはずです。
しかし、外注費が否認され、給与として扱わなければならなくなると消費税の仕入税額控除も否認され、その分、納付すべき消費税が多くなります。

税務調査で外注費を否認されないための対処法

税務調査で外注費が否認されてしまうと、追加で納付しなければならない税額が大きくなります。追加で支払う本税や追徴課税などは、原則として一括納付が求められるため、否認された外注費の額によっては企業にかかる負担は相当なものとなるはずです。 税務調査で外注費を否認されないためには、以下のような対処法を参考に、対策を講じておきましょう。

契約書類を揃えておく

業務委託契約書や請負契約書など、外注する際には契約書類を作成して相互に署名押印し、保管しておくようにしましょう。 外注先から送付されてくる請求書もきちんと保管しておくことで、形式上の部分においては証明しやすくなります。

外注先にも雇用契約ではないことを伝える

作業を請け負った側が確定申告をする際に、支払われた金額を給与として申告してしまうケースがあります。この場合、税務署では給与所得として取り扱うため、税務調査時に外注先が雇用契約であったと認識していると主張されてしまう可能性が生じます。 作業を外注する際には、外注先にも雇用契約ではなく、支払う報酬も給与ではない旨をしっかり伝えておくことも大切です。

判断がつかない場合は税理士のアドバイスを受けよう

「契約書類を締結しないまま外注してしまっている」「現在の状況で外注費が否認されるのかどうか判断がつかない」といった場合には、税務調査の対応実績に強い税理士事務所へ問い合わせてみましょう。過去の実績に基づいたプロからのアドバイスを受ければ、安心して営業活動に専念することができます。



まとめ

税務調査では、給与を外注費扱いにしていないかチェックされやすく、判断基準を満たしていない場合には、外注費が否認されてしまうこともあります。指摘を受けて修正することになると、かかるコストが多額となるケースもあるため、外注費と給与について問題がないか判断がつかない場合には、税理士へ相談することをおすすめします。

税務調査の日時に都合がつかない場合は、延期できる?

2023.10.25

税務調査が行われる前には、電話で事前通知が行われることが多くなります。この時、税務調査を行う日程について相談がなされますが、指定された日時の都合がつかないケースも出てくるでしょう。また、一旦了承した日時であっても、何らかの事情で都合が悪くなってしまうこともあるかもしれません。
そのような場合、税務調査の延期や日程の調整を依頼することはできるのでしょうか。
今回は、税務調査の延期についてご説明します。



税務調査は、拒否はできないが延期はできる

税務署による税務調査は、納税者の許可が必要な任意調査です。しかしながら、税務調査官には質問検査権があり、税務調査を行う権利が認められており、税務調査を拒否した場合には1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。そのため、任意調査ではありますが税務調査を簡単に拒否することはできません。しかし、正当な理由がある場合には、任意調査の日程を延期することはできるのです。
国税通則法第74条の9第2項では「税務署長等は、前項の規定による通知を受けた納税義務者から合理的な理由を付して同項第一号または第二号に掲げる事項について変更するよう求めがあった場合には、当該事項について協議するよう努めるものとする。」としています。では、税務調査の延期が認められる合理的な理由とはどのようなケースが対象になるのでしょうか。

税務調査が延期できる合理的な理由とは

国税通則法の法令解釈通達を見ると、事前通知した日時等の変更に係る合理的な理由として、次のように記載されています。
「5-6 法第74条の9第2項の規定の適用に当たり、調査を開始する日時または調査を行う場所の変更を求める理由が合理的であるか否かは、個々の事案における事実関係に即して、当該納税義務者の私的利益と実地の調査の適正かつ円滑な実施の必要性という行政目的とを比較衡量の上判断するが、例えば、納税義務者等(税務代理人を含む。以下、5-6において同じ。)の病気・怪我等による一時的な入院や親族の葬儀等の一身上のやむを得ない事情、納税義務者等の業務上やむを得ない事情がある場合は、合理的な理由があるものとして取り扱うことに留意する。」
これによると、
・病気や怪我等による入院
・親族の葬儀
・業務上の理由
は合理的な理由に該当することが分かります。
また、納税義務者だけでなく、税務代理人である税理士の病気や業務上の理由も税務調査の延期が認められる合理的な理由となり得ることがお分かりになるでしょう。

税務調査の延期ができる具体的な事例とは

税務調査の延期を申し出ても認められる、具体的な事例をご紹介します。

業務が忙しく、立ち会いができない場合

業務上のやむを得ない事情であれば、税務調査の延期が可能です。そのため、指定された時期は忙しくて税務調査に必要な書類を準備できなかったり、当日の立ち会いが難しいといった場合は、事前通知の際に指定された日時を延期できると考えられます。
例えば、ケーキ店にクリスマスの前日に税務調査が入る場合は、クリスマスケーキの準備に忙しく、税務調査に立ち会う時間は確保できないでしょう。このような場合は、税務調査の日時を都合がつくスケジュールに延期してもらうことができます。

重要な商談が入っている場合

税務調査の事前通知は、数か月も前に行われるわけではありません。一般的には、税務調査の2~3週間ほど前に連絡が入るケースが多くなっています。
そのため、指定された日はすでに会社にとって重要な商談のアポイントが入っているケースもあるでしょう。税務調査のために大きな商談をキャンセルしなければならなくなれば、会社としての収益にも影響します。そのような場合は調査官に事情を説明し、延期を依頼するようにしましょう。

経営者の健康上の理由で対応が難しい場合

病気や怪我などで入院している場合や、入院に至らないまでも療養や安静が必要な場合などは、税務調査に対応することができません。無理をして税務調査に対応しても、実地調査中に体調が悪化してしまえば、調査官も困ってしまうはずです。
健康上の問題で税務調査の対応が難しい場合も、遠慮せずに延期を依頼しましょう。

経営者が不在のために対応できない場合

新しい店舗やオフィスの立ち上げのために、経営者が長期間不在にするケースもあるでしょう。立ち上げの時期は、その後の事業を左右する重要なタイミングです。そのため、その時期に税務調査に対応するために新しい店舗や事業所から離れてしまうと、利益に大きな影響が出る可能性があります。このようなケースも、税務調査の延期が認められると考えられます。

税理士の立ち会いが難しい場合も税務調査の延期依頼が可能

税務調査の事前通知がなされた場合、納税者の都合がついても、税理士の都合がつかないケースもあるでしょう。そのような場合も、税理士の立ち会える日程にスケジュールを延期することができます。
納税者の中には、顧問税理士がいないものの、税務調査の際には税理士に立ち会いを依頼したいと考える方もいらっしゃるでしょう。そのような場合も税理士の都合を確認してから税務調査を受けたいと伝えれば、指定された税務調査の日時を延期することができるのです。

税務調査の事前通知を受けたらすべきこと

税務調査の事前通知で、実地調査の日時を示された場合、スケジュールに問題がなければその日程で約束をして問題ありません。しかし、税理士が立ち会える日に日程を変えてほしい場合などは、日程の延期が可能です。顧問税理士がおり、確定申告書を提出する際に税務代理権限証書を添付していれば、納税者だけでなく、顧問税理士の双方に事前通知が行われる仕組みとなっています。しかし、顧問税理士契約を結んでいない場合でも、税務調査の通知があれば、スポット対応ができる税理士に対応を依頼することをおすすめします。
税理士に税務調査の対応を依頼すれば、事前に帳簿などのチェックを受け、指摘を受けやすい事項に対するアドバイスを受けることができます。また、税務調査では解釈の違いによって、正しくも、間違いにも捉えられるケースがあります。そのようなケースが出てきた場合にも、税理士が実地調査当日に同席していれば、納税者側の立場に立った説明が可能です。
税務調査の事前通知を受けたら、まずは税理士に相談することをおすすめします。

まとめ

税務調査の日時は、都合がつかない場合は延期が可能です。例えば、納税者が業務で忙しい日、健康上の都合で立ち会えない日、税理士の都合がつかない日など、合理的な理由があれば延期をお願いすることができます。
税理士法人松本は、税務調査の経験を豊富にもつ税理士集団です。税務調査をスムーズに終わらせるためには、税務調査官の主張も認めた上で、税法上の解釈の違いを説明し、納税者側の主張を伝えることが大切です。税理士法人松本は、数多くの税務調査に対応してきた経験から、調査官との交渉における落としどころを早いタイミングで見出し、双方が納得できるような折衝を進めてまいります。
税務調査の事前通知が入ったら、まずはお気軽にご相談ください。また、事前通知にて日時の約束をしてしまった場合も延期できる可能性があります。すでに税務調査の日時が決定している場合もお早めに税理士法人松本までお問い合わせください。



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